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環境保護政策と行政の形

もう少し具体的に説明しますと、そういう国民総幸福量的な哲学から国を治めた場合、何が違ってくるのかという質問をよく受けますが、一つは、政策で何を優先するかが違ってきます。ブータンの場合いろいろありますけれども、いちばん有名なのは、環境保護政策がもう四十年程前から世界的なレベルにあることです。誰の助けも受けないで、自分たちの力でつくり上げて、実践してきたのです。

例えば、物々交換から近代経済へ移り変わる時に、外貨が非常に不足しているわけです。のどから手が出るほど外貨が欲しいのです。いちばん近道だったのは、国に豊富にある、特に高価な熱帯のチーク材などの木材を輸出すれば、外貨が入ってくるわけです。けれども、それは国王と官僚が侃侃囂々と話し合いをしたあとで、輸出禁止となった。

それプラス、国民が家を建てる時や燃料に、木を切らなくてはいけないわけですから、そういう時の森林伐採の管理をしっかりしなければいけない。また、その頃、ブータンの全国土に占める森の割合が四割くらいだったのを、国の目標として六割五分にすると決めました。今はもう増えすぎて、七割以上になっています。そういう環境保護政策を、世界銀行やアジア銀行などが、まだそういうことを考えない時から、すでに実行していました。だから、何を優先するかというプライオリティが違ってくるということが一つです。

それから、もう一つは行政の形ですが、行政とは民の視点からなすべきだということです。そうしなければ国が滅びるという考え方からすると、縦割り行政はできないわけです。国民の生活は、大蔵省の生活と農林省の生活に分けられませんから、すべて横割りになるわけです。ブータンでも、役人の縦割りや、わが省の損得という考えは、気をつけていないと出てくるものですから、大臣、内閣のチームワークが重要です。とにかく国王がそれを叩き込んだのです。トップがチームワークをしっかりしないと、役人はついてこない。横割りの行政を常に努力して実践してきました。

ですから、例えば森林保護政策は農林省だけのお役目じゃないわけです。環境省の役目だけでもないわけです。道路建設などにもかかってきますから建設省や大蔵省、国民の教育の観点から文部省も関わります。木を燃やすと森林伐採につながるので、電力開発も必要です。配電を早くしなければいけないということで、電力会社などもチームに加わっています。トップから下まで横割りで物事を進めようとするその姿勢が常にある国だということが、二つ目の具体的な例です。

協力:社団法人 学士会
本稿は平成18年10月10日夕食会(学士会が会員向けに毎月開催している)における講演の要旨です。

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